スイッチ悪意の実験
著者:潮谷験
出版社:講談社
目次(章構成)
- 一 立秋
- 二 実験
- 三 白露
- 四 構築
- 五 教祖
- 六 誠実
- 七 暴走
- 八 犯人
- 九 接見
- エピローグ
あらすじ
主人公である箱川小雪(はこがわこゆき)は、自身が通っている私立狼谷(ろうこく)大学で、風変わりなアルバイトに誘われる。
スポンサーは売れっ子心理コンサルタントである安楽是清(あらきこれきよ)。
彼は「純粋な悪」を研究課題にしており、アルバイトは実験の協力だという。
集まった6人の大学生たちのスマホには、自分たちとはなんの関わりもなく幸せにパン屋を経営して暮らしている家族を、破滅させる「スイッチ」のアプリがインストールされる。
もし、スイッチが押された場合には、パン屋への資金援助が即時停止され、一家は路頭に迷ってしまう。
スイッチを押しても押さなくても毎日1万円、さらには一ヶ月後に100万円が手に入る。押すメリットはなく、「誰も押すわけがない」と皆がそう思っていたが……
見どころ
本書の見どころはなんといっても、主人公の内面における成長にあると思います。
小雪は幼少期に体験した出来事の影響で、自身の判断を信じることができなくなり、何かを選ぶ時にはコイントスで決めるようにしています。
本来、決断する時にはさまざまなことを考え、その結果に責任を持たなければなりません。しかし小雪はその全てをコイントスに任せていたことから、自身の中身が空っぽであることに気がつき、苦しみ、悩みます。
そして、友人との本音のぶつかりあいで彼女はそれを乗り越えていきます。その過程はとても感動的。一つ一つの選択は何気なくても、それが自分を形作っていくものなのだと考えさせられました。
こんな人におすすめ
本書では、実験対象であるパン屋でとある事件が起こり、その解決に小雪たちが挑みます。
その内容はまさにミステリー!
要所に時系列のトリックが入ってきて、じっくりと考え込まされました。ミステリーが好きな人にはぜひおすすめです。
また、本書では「自分を大事にする」ことについても描かれており、「自分なんて…」「どうせ私が何か言っても…」なんて思ってしまう方は必読です!
主人公の小雪と一緒に、自信を取り戻しましょう!
スイッチ悪意の実験の総合評価と感想
総合評価:★★★★☆(4.5)
| 評価項目 | 点数 |
|---|---|
| ストーリー | ★★★★★ |
| 設定の独創性 | ★★★★★ |
| 読みやすさ | ★★★★★ |
| 読後感 | ★★★★☆ |
潮谷験さんのデビュー作にして、「人間の悪意」を実験の形であぶり出すという設定が強烈な一作でした。無関係で幸せに暮らす一家を破滅させる「スイッチ」——押しても押さなくても報酬はもらえ、押すメリットは一切ない。「誰も押すわけがない」はずのこの装置が、じわじわと6人の大学生の心を蝕んでいきます。
「純粋な悪は存在するのか」という問いを軸に、登場人物それぞれの事情や心理が丁寧に描かれ、心理戦としての緊張感が全編に張り詰めています。それでいて、時系列を巧みに操ったトリックもしっかり効いていて、本格ミステリーとしての驚きも抜群。設定の奇抜さだけで終わらないのが潮谷験さんの実力です。
重いテーマながら、主人公の内面の変化・成長には救いもあり、読後には考えさせられるものが残ります。心理戦とミステリーの両方をじっくり味わいたい人、そして「潮谷験を一作目から読みたい」人にまずおすすめしたい一冊です。
『スイッチ悪意の実験』は、潮谷験さんのデビュー作。他の作品もまとめて知りたい方は、おすすめ全5作をこちらで紹介しています。



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