【書評】電気じかけのクジラは歌う(逸木裕)あらすじと感想|「なぜ創作するのか」を問う近未来ミステリー

ミステリー

電気じかけのクジラは歌う

著者:逸木裕
出版社:講談社

目次(章構成)

  • 第1章
  • 第2章
  • 第3章
  • 第4章
  • エピローグ

あらすじ

 ヒトはもう、創作らなくていい——

 人工知能が個人に合わせて作曲するアプリ「Jing」が普及し、作曲家は絶滅した。

 「Jing」専属検査員である元作曲家・岡部のもとに、残り少ない現役作曲家で親友の名塚が自殺したと知らせが入る。

 そして、名塚から自らの指をかたどった謎のオブジェと未完の新曲が送られてきたのだ。

 名塚を慕うピアニスト・梨紗とともにその意図を追ううち、岡部はAI社会の巨大な謎に肉薄していく——。

 私たちはなぜ創作するのか。この衝動はどこから来るのか。

 横溝正史ミステリ大賞受賞作家による衝撃の近未来ミステリー!

見どころ

 本書の見どころは、自殺した親友から送られてきた「指をかたどったオブジェと新曲」の謎を解き明かす過程です。

 主人公はその謎を解き明かすため、元バンドメンバーや反AI組織の構成員などと会って話を聞きます。

 その時に突きつけられる「なぜ作曲家でありながらAI会社に従うのか」「作曲(創作)は人の手によるものだ」という問いや主張。当初は「AIで誰もが作曲をできるようになった。自分は人工知能の作る音楽をサポートする」と回答していましたが、徐々に自身の内面と向かい合っていきます。

 その際の葛藤や、徐々に明らかになっていく真実はとても読み応えがある内容です。

こんな人におすすめ

 本書は散りばめられた謎を解き、すでにこの世を去っている作曲家・名塚の思考を解き明かす、まさにミステリー。それでいて、ヒューマンドラマとしても読み応えがあります。

 人工知能が進歩した末に廃業を余儀なくされた作曲家をはじめとした音楽に携わる人々の葛藤や信念、憎悪などが生々しく表現されており、その中で主人公はどんな選択をして人工知能と向き合うのか。

 生成AIなどが浸透しつつある今の時代は特に読み応えがある内容で、ミステリー好きはもちろん、ヒューマンドラマが好きな人にもおすすめです。

 中盤までは重い内容ですが、中盤から終盤に向けては徐々に真実が明らかになり、ページをめくる手が止まらなくなること間違いなしです!

電気じかけのクジラは歌うの総合評価と感想

総合評価:★★★★☆(4.5)

評価項目点数
ストーリー★★★★★
テーマ性★★★★★
読みやすさ★★★★☆
読後感★★★★★


「ヒトはもう、創作らなくていい」——AIが個人に最適化した曲を作り、作曲家が絶滅した近未来。この設定だけで、生成AIが当たり前になりつつある今の私たちに突き刺さる一冊でした。

 親友の作曲家・名塚の自殺と、遺された「指をかたどったオブジェと未完の新曲」という謎。ミステリーとしての牽引力はもちろん、その謎を追う過程で何度も突きつけられる「私たちはなぜ創作するのか」という問いが、読んでいるあいだずっと胸に残ります。ミステリーでありながら、廃業した作曲家たちの葛藤・信念・憎悪を描くヒューマンドラマとしても読み応えは抜群です。

 中盤までは重厚でじっくりした展開ですが、終盤に向けて一気に真実が明らかになり、ページをめくる手が止まらなくなります。主人公・岡部が最後にAIとどう向き合い、どんな選択をするのか——読み終えたあと、「自分にとって“創る”とは何だろう」と考えずにはいられませんでした。

 ミステリー好きはもちろん、AI時代の生き方や創作について考えたいすべての人におすすめの、いま読むべき近未来ミステリーです。

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