時空犯
著者:潮谷 験
出版社:講談社
目次(章構成)
- 第一章 時間遡行
- 第二章 二〇一八年六月一日(九百八十回目)
- 第三章 二〇一八年六月一日(九百八十一回目)
- 第四章 知性体
- 第五章 夜行列車[いぶき]
- 第六章 時空犯
- 最終章 彼らの時間
あらすじ
京都市内のマンションに自宅兼事務所を構える探偵、姫崎智弘(きさきともひろ)のもとに「成功報酬1000万円、要説明会出席。応諾を問わず、準備金40万円支給。」という、依頼内容が不明のメールが届く。
差出人は情報工学博士の北神伊織(きたかみいおり)。
姫崎はそのメールに記載されていた説明会に出席するため、京都市東山区の大型研究施設の4階にある大会議室へ向かう。そこには警察官、元官僚、芸能事務所員、観光協会会長、盗聴器発見業者、高校生、芸能人と、年齢も性別も職業もバラバラな人物たちが集められていた。
そこに現れた北神博士は、自身の研究内容が「時間遡行」であること、そして自らも時間の巻き戻しを体験しており、今日が「九百七十八回目」の2018年6月1日であることを告げる。さらに長年の研究により、時間の巻き戻しを体験できる液体を手に入れたことも明かした。
北神博士の依頼内容は2つ。試薬を飲んで時間の巻き戻しを第三者が観測できるかを試すこと。そして体験できた場合は、その原因を究明することだった。
姫崎らは全員が試薬を飲み、時間の巻き戻しを体験することになるが、その最中、依頼人である北神博士の遺体が発見される。
時間が巻き戻される中で博士が殺された理由とは、千回近くも2018年6月1日が繰り返される理由とは——。
見どころ
本書の見どころは、時間の巻き戻しを行っている「時空犯」を見つけ出すための推理過程にあるのはもちろんのこと、登場人物たちもそれぞれ個性的で物語を彩っています。
特に主人公・姫崎と、彼が以前にとある理由から探偵事務所に匿っていた蒼井麻緒(あおいまお)のやりとりは、笑いありシリアスありで読んでいて飽きません。
また本書では、時間遡行を用いた犯罪行為が描かれます。その理論についても詳しく説明されており、「私たちが認識していないだけで、本当に時間の巻き戻しは起きているのでは…」と思わされるほど。その理論的な深さがとても興味深かったです。
こんな人におすすめ
私は、『ミノタウロス現象』を読んで潮谷験を知り、その流れで本書を読みましたが、期待を裏切ることなくテンポの良いミステリー小説でした。
『ミノタウロス現象』を読んで楽しめた人は、本書もきっと気に入るはずです。
殺人が時間遡行によりなかったことになる…しかし、被害者は殺される前の恐怖を覚えている…その罪はどう裁くのか、などの本書ならではの切り口はとても斬新で、ありきたりなミステリー小説に飽きてきた人には特におすすめです!
時空犯の総合評価と感想
総合評価:★★★★☆(4.5)
| 評価項目 | 点数 |
|---|---|
| ストーリー | ★★★★★ |
| 設定の独創性 | ★★★★★ |
| 読みやすさ | ★★★★☆ |
| 読後感 | ★★★★☆ |
「今日は978回目の6月1日だ」——情報工学博士のこの一言から、全員が時間遡行を体験する。その最中に依頼人である博士が殺される……という、潮谷験さんらしい大胆な特殊設定×本格ミステリーが存分に味わえる一作でした。
本作が巧いのは、「時間が巻き戻れば殺人もなかったことになる。でも被害者は“殺された恐怖”を覚えている——その罪はどう裁くのか?」という、時間遡行だからこそ成立する倫理的な問いを謎解きの核に据えているところ。SF的なギミックが単なる飾りではなく、事件のロジックそのものに組み込まれていて唸らされます。
時間遡行の理屈も緻密に組み立てられていて、繰り返される一日の謎、そして博士殺害の真相へと一気に引き込まれました。『ミノタウロス現象』を楽しめた方はもちろん、ありきたりなミステリーに飽きた人、SF設定の本格が読みたい人に自信を持っておすすめできる一冊です。
潮谷験さんは、本作のように毎回まったく違う設定でミステリーを描く作家です。「次はどれを読もう?」という方は、おすすめ全5作のまとめもどうぞ。



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