【書評】ジョーカー・ゲーム(柳広司)あらすじと感想|硬派なスパイ・ミステリー

ミステリー

ジョーカー・ゲーム

著者:柳広司
出版社:角川文庫

目次(章構成)

  第一章 ジョーカー・ゲーム
  第二章 幽霊(ゴースト)
  第三章 ロビンソン
  第四章 魔都
  第五章 XX(ダブルクロス)

あらすじ

 昭和12年、結城中佐の発案で民間人を中心として陸軍内に極秘裏に設置されたスパイ養成学校「D機関」。「死ぬな、殺すな、とらわれるな」。この戒律を若き精鋭たちに叩きこみ、軍隊組織の信条を真っ向から否定するD機関の存在は、当然猛反発を招いた。
 だが、頭脳明晰、実行力でも群を抜く結城中佐は、魔術師の如き手捌きで諜報戦の成果を上げていく。
 そして昭和13年4月、佐久間陸軍中尉は陸軍参謀本部からD機関への出向を命じられた。
 彼の任務はD機関に所属しつつ、D機関の弱みを握ることであったが、彼自身が見下していた民間出身のD機関員たちの能力は彼の想像を遥かに上回っており、その任務は思いもよらない結末を迎えることとなる…

見どころ

 本書では各章に物語の中心となる「D機関」の諜報員がおり、その人物を中心として、D機関をよく思わない帝国陸軍内の勢力や外国の諜報員などとの息の詰まる駆け引きはまさに圧巻です。
 また、各章に登場するD機関員たちはその能力の高さゆえに、「自分にできないことはない」という強烈な自負心を持っており、その誰にも頼らず自身で問題を解決していく様は爽快です。
 特に最終章の「XX(ダブルクロス)」は、スパイ容疑をかけられたドイツ人がD機関員の監視下にありながら殺害され、その犯人を探すべくD機関員が秘密裏に捜査を開始するというもので、これぞまさにスパイ・ミステリーという内容でした。
 その事件の結末についても切ないもので、最後に結城中佐が捜査を担当したD機関員に対し、本名を呼んで敬礼する場面には心が震えました。

こんな人におすすめ

 本書は硬派なスパイ・ミステリーで、本格ミステリーが好きな人にも楽しめる内容になっています。
 各章で、秘密を握っているのは誰なのか、誰がスパイなのかを考えて読み進めると楽しめますし、舞台が日中戦争下の日本ということもあり、ミリタリー好きにも楽しめると思います。
 ぜひ、本書を一読し、スパイたちの緊迫感のあるやり取りを感じてください!

ジョーカー・ゲームの総合評価と感想

総合評価:★★★★☆(4.5)

評価項目点数
ストーリー★★★★★
設定・世界観★★★★★
読みやすさ★★★★☆
読後感★★★★★

「死ぬな、殺すな、とらわれるな」——軍の常識を真っ向から否定するスパイ養成学校「D機関」。その精鋭たちが繰り広げる諜報戦を描いた、硬派で知的なスパイ・ミステリーでした。各章ごとに主役のD機関員が替わる連作形式で、帝国陸軍内の敵対勢力や外国の諜報員との息詰まる駆け引きは、まさに圧巻です。

D機関員たちの「自分にできないことはない」という強烈な自負と、誰にも頼らず問題を解決していく様が実に爽快。特に最終章「XX(ダブルクロス)」は、監視下の人物が殺害される本格的なスパイ・ミステリーで、その切ない結末、そして結城中佐が担当隊員を本名で呼び敬礼する場面には、思わず心が震えました。

派手なアクションに頼らず、頭脳戦と人間ドラマで読ませる一級品。骨太なスパイものや、知的な駆け引きが好きな人に自信を持っておすすめできる傑作です。

『ジョーカー・ゲーム』を楽しめた方は、続編『ダブル・ジョーカー』もおすすめです。D機関に対抗する新たな諜報機関「風機関」が登場し、シリーズがさらに面白くなります。

【書評】ダブル・ジョーカー(柳広司)あらすじと感想|『ジョーカー・ゲーム』続編のスパイ・ミステリー
柳広司『ダブル・ジョーカー』の書評・感想。『ジョーカー・ゲーム』続編。「死ぬな、殺すな、とらわれるな」のD機関と、「躊躇なく殺せ、潔く死ね」の風機関——対立する諜報機関を描くスパイ短編集。

『ジョーカー・ゲーム』から始まるこのシリーズは、『ダブル・ジョーカー』を経て、第三作『パラダイス・ロスト』へと続きます。シリーズを追いたい方はこちらもどうぞ。

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